1990年代から始まったITブームは労働者の仕事効率の急激的な向上をもたらしただけでなく,企業のビジネスモデルの革新を引き起こしています。これと同時にITの普及と活用によりIT格差が発生しています。このIT格差は労働者と企業の両面から観察できます。
- 労働者のIT格差:ITを熟練に活用して,様々な情報を収集し,また高度な操作スキルを用いて情報を解析しながら仕事進める労働者は,従来手作業でこなしてきた業務を自動化したり,想像を超えた高い効率で仕事をさばけたりすることができるようになっています。さらに,高度なデータ解析手法を活用して各種の情報を解析すると,より高度な意思決定を行うことができて,従来考えられない高レベルで仕事をこなしている者は,平均水準をはるかに超える高賃金をもらえます。これに対して,ITの活用がうまくできない者は1990年代の後半にすでにたくさんリストラされて,いまは低賃金の単純労働にしか従事できないことになっています。ITをフルに活用して高度な意思決定を行う高賃金労働者の賃金を押し上げ続けていると同時に,ITの意思決定に従いロボットのように単純労働に従事する者の賃金を極端に低いレベルに抑えています。つまり,ITの進展と普及は,労働の二極化をもたらすことになっています。
- 企業のIT格差:企業についても同じIT格差が存在します。ITをうまく活用できる企業は,社内業務の効率を大幅に上げることができるほかに,従来人の手作業を基本とするビジネスの仕組みを,ITシステムを基本とする仕組みに切り替え,つまりビジネスモデルの革新またはDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現することにより,企業の競争力を大幅に強化し,売上と利益の持続的な成長を収めています。これに対して,ITをうまく活用できない企業またはITの活用が困難な業界にある企業は,国内外の同業者との激烈な競争に晒されているだけでなく,ITを活用している新規参入者からの脅威も避けられなくなっています。この結果,ITをうまく活用できている企業はますます強くなると同時に,ITをうまく活用できない企業はジリ貧に落ちています。
2000年からディープラーニング(深層学習)をはじめとした革新的な技術が登場し、AIブームを引き起こしています。生成AIはテキスト,画像,音声などを自律的に生成でき,普通の人間を超えた能力を多数もっています。特に,2022年アメリカのOpenAI社による対話型AI「ChatGPT」の発表を契機に,様々な生成AI商品・サービスが登場してきています。生成AIの活用は,労働者の働くスタイルおよび企業の業務処理システムに革新的な変化をもたらして,従来のIT活用より強い影響を与える可能性があります。
- 国際通貨基金(IMF)は2024年1月の報告書で,先進国の約6割の仕事がAIによって影響を受けると指摘した。うち半数は生産性の向上など恩恵を受ける。しかし,残り半分の人々は賃金や雇用が減るおそれがあると警告した。
- ゴールドマン・サックスは,世界中で3億の雇用が生成AIによる自動化の危機にさらされていると予測しており,その結果,多くの人が再訓練やリスキリングの必要に迫られるだろう。
- マッキンゼーのレポートでは,自動化とAIの影響により,2030年までに3億7,500万人が転職を余儀なくされる可能性があると推定している。
従来のITはあくまでに業務処理の効率を大幅に上げるツールとして活用され,これをフルに活用するために,ITを熟練に操作するスキルだけでなく情報検索・分析および情報に基づく意思決定に関する利用者の活用能力も欠かせません。つまり,ITは仕事のできる人の能力を上げることができます。これに対して,生成AIは日常使っている言葉,つまり自然言語を理解できるため,生成AIを活用するには従来のIT活用のほど高度な操作スキルが要りません。また,生成AIは大量なデータから役立つ情報を自動的に検索し,またこれらの情報を自動的に解析しながら,業務に直接役立つ分析結果・アイデアまたは意思決定を提供することができます。高度なIT操作スキルおよび情報活用能力を持っていない普通の人でも生成AIをうまく活用できれば,高度な情報活用ができてしまい,従来とてもこなせない高度な業務を処理できるようになります。つまり,AIは普通の人の能力を押し上げることができます。この意味で,ITが所得格差を広げたのに対して,AIには貧富の格差をなくす効果が期待されます。
しかし,AIを活用すれば普通の人でも高度な仕事をこなせるようになると,普通の人のもつべき能力のレベルまたは評価基準そのものが高くなります。これをネガティブ的にとらえると,AIを活用できない者はロボットのAIよりレベルが低くなり,職場ではますます使えない者になってしまいます。多数の学者・専門家から指摘されたとおり,AIは人類を取り替えるのではなく,AIを活用できる人がAIを活用できない人を取り替えるようになります。つまり,AIの上に立つ人間と、AI以下の働きしかできない人間の格差が残酷なまでに拡大する「超格差社会」になる可能性も十分にあります。
以下では無料で利用できる生成AIサービスに限定して,関連サイトを掲載します。
1. テキスト・画像・翻訳などの総合生成AIサービス
- OpenAI社のChatGPT:https://chatgpt.com
- Google社のGemini:https://gemini.google.com/app
- Microsoft社のCopilot:https://copilot.microsoft.com/
- DeepSeek社のDeepSeek:https://chat.deepseek.com/
- Anthropic(アンスロピック)社のClaude(クロード):https://claude.ai/
2. 情報検索系生成AIサービス
- PerplexityAI社のPerplexity:https://www.perplexity.ai/
- MainFunc社のGenspark:https://www.genspark.ai/
- 日本発Sparticle株式会社のFelo:https://felo.ai/search
- ワシントン大学が公開した論文のまとめに特化したAI:https://openscholar.allen.ai (日本語は使えない)
3. 画像生成に特化した生成AIサービス
- Adobe社のAdobe Firefly:https://firefly.adobe.com/
- Microsoft社のBing Image Creator:https://www.bing.com/images/create/
- Microsoft社のMicrosoft Designer:https://designer.microsoft.com/
- Midjourney社のMidjourney:https://www.midjourney.com/ (無料利用ができなくなっている)
- ミュンヘン大学のCompVisグループのStable Diffusion:https://stablediffusionweb.com/ja
4. 生成AIサービスの活用方法に関するサイト
- 東京経済大学情報システム課:生成AIの利用方法
- 東京都千代田区:生成AI活用方針および活用ガイドライン
- AI総研:生成AIのプロンプトをうまく書く8つのコツ
- 創業手帳:生成AIのプロンプトとは?作成するコツやステップ・例文・テンプレートを紹介
- 生成AIのコツ:ChatGPTプロンプトの書き方+鉄板テンプレート
5. 生成AIと社会
- 日本銀行:生成AIが社会にもたらす衝撃と未来
- 三菱総合研究所:生成AIによる社会的懸念と対策
- 厚生労働省:生成AIの技術動向と影響
